皿池湿原

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皿池湿原は、平時におきましては閉扉により湿原保全のための立ち入り制限を行っています。
多くの花が咲き乱れる夏季には見学会等による一般開放を行っています。

天然記念物 皿池湿原とは

皿池湿原は市域の重要な生態系

皿池湿原は、複数の湿原群からなる生物多様性に富んだ県下有数の滲水湿原(湧水湿原)です。
植物群落の貴重性を示す「兵庫県版レッドデータブック 2010 植物群落」(2010,兵庫県)においても 「規模的、質的にすぐれており貴重性の程度が最も高く、全国的価値に相当するもの。」として、A ランクに指定されています。
また、2019年3月に兵庫県天然記念物に指定されました。
滲水湿原は貧栄養で特異な環境であるため、富栄養性の高茎草本植物は侵入できず、低茎草本植物を中心とした貧栄養な環境にも耐えうる 湿原特有の植物が生育しています。また、植物と同様に湿原でしかみられない昆虫なども生息しています。
皿池湿原は、三田市の生物多様性を維持するうえで非常に重要な生態系です。

湿原の成り立ち

皿池湿原では、角の取れた円い礫が地表面に転がっている様子をみることができます。 皿池湿原の地層は、高位段丘礫層という新しい時代(第四期)にできた川の堆積物からなるもので、 未固結の砂礫や粘土が交互に層をなしています。
雨が降ると地中にしみ込んだ水は、砂礫層を通過して粘土層の上面を流れ、粘土層がとぎれる斜面でにじみ出ます。 にじみ出た先が粘土層を有するほとんど平坦地といってもよい緩傾斜地であると、水が停滞して湿った立地が形成されます。 未固結の砂礫や粘土を持つ段丘礫層は湿原ができやすい地質であり、皿池湿原のなりたちも段丘礫層と非常に関係が深く、 地質に由来するものと考えられています。

3つの植物群落

皿池湿原に成立する植物群落は、イヌノハナヒゲ群集、ヌマガヤ群落、イヌツゲ群落の3 群落に大きく分けることができます。
表土がみえる湿潤な立地には草丈の低いイヌノハナヒゲ群集が分布しています。サギソウ、トキソウ、ムラサキミミカキグサ、ミカヅキグサ、 モウセンゴケなどの湿原を代表する多くの植物が生育しています。一方、土砂の堆積した過湿な立地にはヌマガヤ群落が成立しています。 イヌノハナヒゲ群集の周辺部にみられ、カキランやミズギボウシ、サワヒヨドリなどの草丈の高い美しい花がみられます。 また、湿原の周縁部には、アカマツやソヨゴなどの木本類を多く含んだイヌツゲ群落が成立しています。

多様な生きものとそれらを守るための植生管理

湿原には、そこでしかみられない生きものがたくさんいます。生物多様性を保全するうえで非常に重要な場所であるとともに、 可憐な草花や昆虫、緑と水からなる美しい景観は、文化的な恵みを私たちにもたらし、生活に安らぎや潤いを与えてくれます。
しかし、このような湿原は、かつて利用していた周辺の里山林が放置され植生遷移が進行することにより、 湿原面積の縮小や湿原生植物の消失が起こり、生物多様性が低下するといった問題が生じています。
皿池湿原においても、例外にもれず、湿原内部への樹木の侵入、湿原周縁部での樹木による湿原の被陰といった状況がみられます。 また、集水域の里山の木々は大きくなり、密度も高くなって鬱蒼としています。湿原の涵養水を十分に確保するという意味において、 これもまたあまりよい状況ではありません。
皿池湿原における生物多様性を保全し、その恵みを将来に引き継いでいくには、 かつての里山林の利用に学び、湿原および湿原周辺部における樹木の皆伐、里山林の間伐など、 進行した植生遷移を積極的に退行させることが不可欠です。

皿池湿原の位置

皿池湿原の位置

皿池湿原の成り立ち

地表面に転がる角の取れた円い礫

皿池湿原の植生

イヌノハナヒゲ群集

皿池湿原の課題(樹木の侵入)

湿原内部への樹木の侵入

皿池湿原の課題(樹木による被陰)

湿原周縁部の樹木による被陰