里山林(里山放置林)
皿池湿原の周辺、集水域にはかつて薪炭林として利用されていた里山林が分布しています。定期的に伐採されることがなくなったため、木々は大きくなり、密度も高くなっています。里山林のやや湿った林床にはヤマドリゼンマイというシダ植物が約 40 株生えています。比較的標高の高い湿原でみられることが多く、氷河期の遺存植物といわれています。しかし、このヤマドリゼンマイが生える場所に湿原の面影はありません。ヤマドリゼンマイが生えていた湿原が里山放置林の発達により消失してしまい、辛うじてヤマドリゼンマイだけが残っている状況なのかもしれません。 里山林の発達は湿原にとって好ましいことではありませんが、じつは里山放置林にとっても林内の種多様性を低下させる要因となっています。かつて利用されていた頃に比べると林内は鬱蒼とし、日当たりが悪くなっていることが原因です。里山林の管理を行うことは、湿原だけでなく、里山林の種多様性を守ることにもつながります。 |
湿生林
湿原に隣接する過湿地には、サクラバハンノキの優占する湿生林が分布しています。モリアオガエルの生息場・産卵場になっているほか、ゼフィルスであるミドリシジミが生息しています。 なお、皿池湿原を取り巻く豊かな生態系を維持するためには、湿生林の保全は不可欠ですが、湿原はサクラバハンノキの生育地としても適しており、同種が容易に侵入・定着しやすいという側面があります。湿原内にサクラバハンノキが侵入し湿生林が拡大することは、湿原面積の縮小、ひいては湿原生植物の消失につながるため避けなければなりません。湿生林についてはその保全とともに拡大を防止することが重要です。 |
ため池
湿原に隣接するため池として、上皿池、皿池が分布しています。昨今、釣り人が容易にアプローチできるようなため池には、たいていブラックバスなどの外来魚が生息しています。一旦、外来魚が侵入すると、在来魚の多様性は低下してしまい、外来魚を駆除し元に戻すことは非常に困難です。 最上流に位置する上皿池にはまだブラックバスなどの外来魚は侵入していません。外来魚が侵入していないだけでも価値がありますが、それに加えて上皿池にはカワバタモロコ、ドジョウ、メダカなどの近年では減少傾向にある貴重な魚類が生息しています。 |
草 地
ため池の堰堤には、定期的に刈り取りが行われている管理草地が分布しています。一般的に管理草地では、ススキやネザサなどの優占する植物の背丈が低く刈り抑えられ、また密生しないため、その他の植物が混生しやすく、種多様性の高い種構成となります。 また、皿池の堰堤の法尻には、ため池の漏水により湿り気を帯びた草地になっており、イヌセンブリのような比較的珍しい植物もみることができます。 |